2020年6月4日に小規模企業向けのバックオフィス(経理、会計、総務、庶務など)業務の改善支援を行う「Reboot」が「人手不足?採用の前に小規模企業にできること」と題し、対談形式のオンラインイベントを開催しました。
小規模企業特有の悩みや問題。これからの生き残りをかけた企業戦線の中でどのような経営選択が正しいのかという問題について、COSMO ALPHA株式会社 代表取締役 野崎綾二氏をお招きし、事業責任者の伊藤悠と意見を交わしました。
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社内体制 人手不足問題
管理体制の課題
伊藤:日本の製造業は優秀なイメージがありましたが、携わると納期の管理などに弱い部分があるようですね。
野崎:その通りです。
組織の役割が曖昧で、管理部門というものがあるようでない場合が多く、担当者個々人で管理を行っている場合ことがほとんどです。トラブルなどの原因がどこにあったのかも把握できていない。取引先から返品があり原因が分からないまま、再納品することもあります。
会社側の「戻ってきたら作り直せばいい」という安易な考えも管理に大きく繋がりますし、負の連鎖を生み出している原因になっています。
伊藤:技術の精度が低いというよりは管理に問題がありますね。
野崎:技術品質に関しては問題がゼロになるということはありえません。人間が作っている物なのでエラーは必ず生じます。
会社としてはそのエラーを発見する機能があること。どう予防や改善するのか、ということを管理組み込んでいくことが必要です。
伊藤:失敗から何かを生み出すという、基本が大切ですね。
野崎:作業進行時、段階ごとで進捗が分かるようにすると担当者に責任感が生まれます。またどの段階でミスが生まれているかなどの統計を取ることで改善は大きく進みます。
伊藤:失敗を責めるのではなく、どの部分で不具合が生じているか判明させて自己認知することが可能になるわけですね。
野崎:目的がしっかりしていれば行うことは至ってシンプルになります。
会社全体で改善に取り組む目的も「会社に利益をだし、社員に賞与を出せるようにする」など明確に掲げると団結感も生まれてきます。
伊藤:社内でのコミュニケーションにもつながり素晴らしいですね。そのような協力体制に会社を変えるのに必要なことはなんでしょうか?
野崎:根気がまず大切です。
例えば、隣にいる社員同士でも会話をしない場合が多いので、私のような人間が間を取り持ち、その作業者が取り組んでいる内容に興味を持ち話しかける。その積み重ねで社員間に小さな会話がうまれ少しずつ改善に繋がっていきます。
そんな当たり前のことが出来ていない事実が小規模企業には存在します。
会社に働く魅力がない
伊藤:先ほど賃金・賞与についての話も少し出ましたが、人件費を上げる事に対しての問題はどうでしょうか?
野崎:収入、支出に関しては切っても切れない関係です。
経営する上で、支出を伴いながら収入を得ることが当然で、その差益が利益であること理解しなければなりません。収入である売上に焦点が向き過ぎてしまい、支出を見ることが出来ていないことが多々あります。原価の管理ができていない場合や、簡単に言えば赤字か黒字か分からなくなってしまっていることもあります。
伊藤:売上を伸ばすということではなく、収入と支出の現状を把握することが必要そうですね。
野崎:そうなると、支出を減らすという考えになり、最初に思いつく支出は人件費です。
そこで、人を削ると当然人手に影響するので業務は滞り、経営を苦しめる根本的な原因になります。
支出を抑えるには人件費削減で対応するのではなく、利益を生み出すための価格交渉など企業間で交渉する力を身につけることが大切です。社員から奪うのではなく、与えるという思いが経営を良くすることで需要なポイントになります。
伊藤:人材に関しては小規模企業にとって大きな課題として上がっていますね。
野崎:主要な部分でのコストカットが行えないままでは、優秀な人材を確保することが出来ません。現状を変えず、人を雇おうとすると賃金は安いままになってしまいます。その結果、社員は定着せず、優秀な人材が入社することもない。その循環が生まれているのが現状です。
会社を長期的にどうするのかという問題を見つめ、アプローチをかけていかなければなりません。その視点がずれていると企業側、社員側、双方に利益を生み出すことができなくなってしまいます。
伊藤:働きにくい仕組みついてはどう思われますか?
野崎:大きな会社になれば部署ごとに管理する方法になりますが、小規模企業の場合は、一人ひとりの考えていることに沿う必要があります。社員の生活環境含め、不満や、願いを聞き取ることのできる環境を備える必要があります。それを社長が直接できなくても、側近者がヒアリングするだけで格段に環境は良くなります。
企業の魅力発信
伊藤:会社の魅力の発信については?
野崎:この部分は、必要性、効果について理解していないことが大きいです。
製造業には無縁と考えている場合や、いいものを作っていれば必ず仕事が増える、と旧来の価値観のまま停滞していることが危険です。時代はどんどん変化していくので、いいものを作っているからこそ時代の流れに乗せて発信していく必要があります。日本の製造業は世界的に見ても本当に魅力のある企業が多いです。だからこそインターネットなどのツールを使用して世界に発信していくべきですね。
伊藤:多くの魅力を持ち合わせているにもかかわらず発信できていないのですね。
野崎:はい。自分たちの技術に対して、その価値や汎用性の高さを理解していないことが目立ちます。本当はすごいのに「いや、普通だけど」と本人たちは思っている。
その点を含め、今後は新しい視点を持った人材の確保や、受身の姿勢ではなく、魅力を発信していく攻めの姿勢ができる環境を整えることが必須課題になると考えています。
伊藤:その為にもやはり人材が鍵となりますね。給与体系や昇給基準などに注意する点はありますか?
野崎:評価制度では「社内で話し合う」ことが効果的です。社内規定も社員間で話し合いながら作り上げている会社もあります。投げかけが大切で、従業員が求めていることに会社が応えることが必要です。
伊藤:結果というよりはプロセスが重要のようですね。
野崎:大企業とは違います。社員のモチベーションを上げる為に、まずは社員自身に会社と自分の関係への意識を持たせること、そして会社がそれに答えることができれば好循環に繋がっていきます。
企業改善に新たな流れを作り出すために
伊藤:ありがとうございます。では最後に、企業改善をしていく中で、滞った状態ではなく、新たな流れを作り出す為には何が必要でしょうか?
野崎:固執化された小規模企業に変化を加えることは大変です。そのような意味でもパートナーが必要となり、違う視点を持った人材が今後、必ず必要になってきます。時代に沿った柔軟な考えを取り入れることや、業務改善に踏み切る為には社長の決断が必須です。
今の状態で切り盛りしたり、多額な費用をかけたりする改善ではなく、企業規模や実態にあった細かな改善が求められます。その中でも業務の洗い出しや在庫管理など、1つひとつ丁寧に解決させることで企業は劇的に変化すると私は考えています。
伊藤:確かに、小規模企業に多額な改善費用は向きませんね。新しいシステムの導入よりも、今ある業務の円滑化を図り、社内でのコミュニケーションや管理業務の改善に注力する必要があります。そして、共に働いていく仲間に視線を向けることで互いの絆が強まり、この時代を強く生き抜いていけるのかもしれません。本日はお忙しい中ありがとうございました。