【人手不足?採用の前に小規模企業にできること】対談レポート 前編

2020年6月4日に小規模企業向けのバックオフィス(経理、会計、総務、庶務など)業務の改善支援を行う「Reboot」が「人手不足?採用の前に小規模企業にできること」と題し、対談形式のオンラインイベントを開催しました。
小規模企業特有の悩みや問題。これからの生き残りをかけた企業戦線の中でどのような経営選択が正しいのかという問題について、COSMO ALPHA株式会社 代表取締役 野崎綾二氏をお招きし、事業責任者の伊藤悠と意見を交わしました。

【ゲスト】
COSMO ALPHA株式会社 代表取締役 野崎綾二
ものづくり業界で15年。サラリーマンとして営業技術や製造オペレーターを経験し、生産管理、品質管理とさまざまな業務を経て現在に至る。
2019年8月にCOSMO ALPHA株式会社を設立し、加工業者の業務改善+受注拡大サポートを現在行う。

【ホスト】
Reboot 事業責任者 伊藤悠
2006年より人材サービス会社でキャリアコンサルタントを経験し、その後、環境ビジネス会社で社内組織づくりや、総務、広報などの業務に携わる。2012年興味のあった被災地の復興支援業務に携わる為、岩手県に移り住み、2015年には地方就労を促進する厚生労働省のプロジェクトを統括。中小企業の組織改善の支援を行いという思いから、2020年5月にRebootを立ち上げる。

人手不足の中に潜む問題とは?

伊藤悠(以下、伊藤):本日は、よろしくお願いいたします。
野崎さんは、これまで数多くの製造業の会社で、業務やコミュニケーションがうまくいってない社内の状況を見てこられたと思います。その経験を踏まえて、町工場の人手不足について一緒にお話できればと思います。
野崎綾二(以下、野崎):よろしくお願いします。

業務の外出し

伊藤:まずは業務の外出しについてです。
人手が足りていない製造業で人手不足を解消するには、人を増やしたり、クラウドソーシングなどを使って業務を外に出したり、
さまざまな方法がありますがどう思われますか?

野崎:そうですね、業務の外出しは業務圧迫の軽減に直結するのでとても重要です。
特に経営者の業務を減らすことは、経営者が会社全体を把握することができるようになり、社内のどこに問題点があるのかをピンポイントで見つけることが可能となります。
その結果、常に方向修正を行えるようになるので、会社にとって大きなメリットとなります。

伊藤:社長自身の抱える業務が軽減することで、会社全体を見ながら問題点の改善に時間が割けるということですね。

野崎:はい。とは言え、なかなかそこに行きつかないのが小規模企業の実状です。
この部分の改善がすすむと、売上や、利益のような数字の管理に意識を回すことができるので、経営的な問題にも素早く対処が可能になります。今月赤字か黒字かといった短期的な判断だけでなく、先を見越した質の高い運営ができるので、必然的に売上も上がっていきますよね。

伊藤:なんだか良いことばかりな気がするのですが、そもそも社長はどうしてそんなに一人で仕事を抱えてしまっているのでしょうか?

野崎:一番多い事例は、先代からその業務をそのまま引き継いだ、というパターンです。町工場は社長も職人であることがほとんどで、職人であるからこそ、自分でなんでもやらないと気が済まない。責任感が強いという部分もありますが、その反面、社員に任せたがらない。そんな背中を見ながら育ってきているので、自分でやらなければ、となんでも抱えてしまう方が多くいます。

伊藤:なるほど。

野崎:このパターンが、非常に多いです。もう、非常に。

伊藤:すごい、実感こもっていますね(笑)。
私は、職人ではないのですが、職人気質の方って丸抱えしてしまうものなのですか?

野崎:プライド的な部分があることもありますが、「自分の会社なのだから、自分がなんとかしなきゃ」という責任感が強いです。すごく大事なことですよね。
とはいえ、経営者が経営に集中するというフェーズに移行するには、仕事の流れを変えていかなければ難しい。
製造業だからこそ、製造が中枢にあるので意識がどうしてもそちらに向いて、経営が疎かになりがちという事実はあります。

伊藤:なるほど。私も企業の組織改善支援を行っている時に感じたのですが、経営者の仕事は流れを細分化することが難しいですよね。
販売するとか物を作ることは仕事をイメージしやすいですが、経営は仕事を明確にすることが困難です。その事実をご存知なのでしょうか?

野崎:いろいろな場で、他社の事例や、最新の経営学など見聞きする場はあります。ただ、それを自分の会社に落とし込む所まで持っていけないケースが大半です。
「うちの会社はどうしたら良いのだろう?」と悩みを抱えていて。いろいろな話は聞くのですが実践までに至らないことがほとんどです。

伊藤:知識としてやるべきことは把握していても、落とし込めていないだけで。

野崎:そうです、手をつける順番とか。問題は一つだけではなくて、複雑に絡み合っています。
だからこそ、問題を整理するためにはまず考える時間がどうしても必要です。片手間では行えないので後回しになり、まずは今日の業務を回さないといけない、そういう毎日の繰り返しにハマってしまっています。

1年かけて仕組みを作った

伊藤:そのような苦しい状況から、脱出した企業さんはありましたか?

野崎:実際私が携わった会社では社長がいなくても業務が回る仕組みを導入しました。

伊藤:それはすごいですね。社長自らの提案ですか?

野崎:そうです。社長自らの提案でした。実行した際、大きな波風は立ちましたが(笑)。

伊藤:(笑)。
大きな改善点としては?

野崎:私が入った時点で納品の9割近くが納期遅れ。取引先におんぶに抱っこ状態でした。
最初に取り組んだことは「片付け」です。
取引先が来社された時、自分たちを見てどのように思うかという点の意識改革から徹底的に行う必要がありました。
当時、材料が納品された時点で、すべてがバラバラに管理されている状態で。目の前の物がいつ入ってきたのか、デットストックなのか、材質はなんなのか。誰が把握しているのか分からない。処理した物なのか、これから処理する物なのか、そんなことすら管理できていない状態でした。

伊藤:そのような取り組みから、現場が自走するようになるまでどのくらいの期間がかかるものなのですか?

野崎:この会社は課題が多かったので社長が現場から手を離して経営に集中できるようになるまで1年ほどかかりました。
ひとつの工程を変化させるごとに多くの不満が上がりましたが、必ず良くなることが見えているので、説得しながら改善を進めていくことが出来ました。

伊藤:取り組んでいる途中は大変ですが、変化すると業務効率が明確に変わりますね。

野崎:業務改善することも大変ですが、それに馴染んでもらうための人に対するコミュニケーションも大きな課題になると思います。

伊藤:そうですね。特に利益を生み出さない経理などのバックフィス業務は特に軽視しがちですよね。

野崎:そのような会社はたくさんあると思います。会社全体が把握できていないがために、とりあえず間接労務費をカットしてしまう。
これは、返って会社が回らなくなる大きな原因の一つです。そのため、経営者が実態を把握した上で、要不要を適切に分析する必要があります。

後編に続く