業務改善 現場レポート【株式会社栗原精機】

「雑務の外出しで業務時間を短縮」
半日かかっていた伝票入力が30分で完了


業務改善希望企業 株式会社栗原精機
昭和43年8月創業。
精密機械加工業を事業主体とし従業員は14名。年間売上約2億円


担当業務改善プランナー 伊藤 悠 氏
2006年より人材サービス会社でキャリアコンサルタントを経験、その後、環境ビジネス会社で社内組織づくり、総務、広報などの業務に携わる。2012年より、岩手県に移り、被災地の復興支援に参加した後、2015年に東京の人材会社に入社、地方就労を促進する厚生労働省のプロジェクトを統括する。本業の傍ら、副業として業務改善プランナ―に認定を受け、中小企業を回り組織改善の支援を行う。

今回の記事ではRebootの業務改善プログラムの事例を紹介します。

取り上げるのは、埼玉県川口市にある精密機械部品を製造する株式会社栗原精機の事例です。
相談者は、栗原精機で総務を務める栗原ヒロ子さん。
相談を受けてから業務改善実施までの過程を紹介します。


業務分析

 「こんにちは」
会社正面入り口と思われる場所から中に入ると
中には精密機械部品を加工するための設備がぎっしりと並んでいます。
事務室に入ると、総務の栗原さんが迎えてくれました。

まずは、栗原さんに普段の仕事の様子と、今困っていることを聞きます。
栗原精機には、以前は事務専任の方がいたそうなのですが、退職してしまい、現在は総務の栗原さんが、経理、労務、人事、総務と、バックオフィスの仕事を一手に引き受け行っています。

細かな仕事が集中し、途中来客対応も一人でこなしているため、時間を要する作業がどうしても後回しになってしまい、長時間働いても仕事が残っている状態が続いてしまっていました。

 課題の発見

「初回ヒアリング」

まず、相手の状況を正確に把握。
短絡的に解決策を提示するのではなく、問題の原因がどこにあるのか、担当者は何を問題として捉えているのかを明確にする。

話を聞くうちに、栗原さんの苦しんでいる点が、
・事務作業を消化するための、まとまった時間がとれないこと
・日々舞い込む作業に追われて重要な業務に時間が割けないこと

新しい人を採用する余裕もなく、業務が溜まり、残業してなんとか処理しているという状況。特に発注伝票や請求書などの経理業務が全く追いついておらず、数か月前の伝票をようやく入力するような状態が続いているとのことでした。

課題発見①

 原材料や備品の購入伝票が月100枚ほどあり、そのデータ入力作業を一人で行っていました。日々少しずつやれば短い時間で行える仕事であるものの、他の仕事と重なり、後回しになって溜まっていってしまう状況。 

課題発見②

栗原さんは一人で内勤をしているので、業務中の電話対応や、急な仕事が舞い込んできたりすると、行っていた作業がどこまで進んでいたか分からなくなってしまう状態でした。1つの仕事にかかる時間が把握できておらず、最終的に仕事が終わらないという事態が頻繁に起こっていることが発覚しました。

課題解決案①

「バックオフィス業務担当者の負担軽減」

担当者自身が行う必要がないものは作業の外出しすることを提案。業務の荷が下りる分他の作業に時間を当てることができる。

業務の外出しに関しては不安な部分もあったようですが、会社の状況と改善に大きくつながる可能性を理解いただき、了承を得ることができました。

課題解決案②

「スケジュールの管理方法提案」

舞い込む仕事に流され管理できていなかった業務を明確化する。

スケジュール管理はどのように行っていますか?と質問したところ特には行っていないと返事を頂き、栗原さんが抱えている業務をスケジュール化する必要性を感じました。

課題業務実践①

「クラウドソーシングの利用で作業軽減」

はじめは共に作業を行い、後に自立して行えるように促すことが大切。
リブーターに依存させるのではなく自立させ、会社運営を共に改善する事がポイント。

大量の伝票入力作業については業務の外し「クラウドソーシング」を実践。
協力者を募集したところ約150人以上の方が興味を示してくれました。
あまりにも人数が多かったので2段階に分け、10人ほどに絞り込み、
ヒアリングする中で、栗原さんと相性の良さそうなワーカーを選定します。
実績があり、受け答えが良く、近場にいる安心感という事も考慮され、神奈川在住の方がに決定。動き始めてからもワーカーさんの仕事ぶり、相性を確認します。

課題業務実践②

「本人に適した業務改善方法を提案」

いくら便利な方法でも本人が利用できなければ意味がない。使用者が一番やりやすい方法を考え提案することも重要。

栗原さんはスケジュールを管理する際、経理業務、電話をする、入金にいく等、1つひとつの管理内容を大まかに記載しているだけでした。スケジュールの管理精度を上げるためには、細かい詳細を書く事が重要である事をお伝えしました。
管理方法は「付箋と紙」を選択。パソコン管理なども方法の1つとして考えましたが、本人のやりやすい範囲で提案し実践することも大切です。

業務実践成果①

自分で行っていた時には月に4、5時間ほど費やしていた作業が、今では30分で済むようになったとのこと。伝票をPDFに変換格納し、ワーカーの方に伝えると、フォーマットに入力してくれます。今まで使用した事がなかったDropboxも、非常に便利だと好評でした。原価率の計算などが円滑に行えるようになり、会社の業績把握を素早く確認する事が出来るようになりました。

業務実践成果②

スケジュールの管理は詳細を書く事が重要です。
まず、今週中にやらなければならない業務をピックアップします。そして、業務にはどのくらいの時間がかかるのかということを把握し、付箋に記載します。

例えば、書類記載という業務に取り組む場合は、内容の他に記載にかかる時間、納期、提出先を付箋に書き出します。その業務を明確化することで、進行状況を栗原さんが把握する事ができ、仕事のやり忘れ、漏れが減少しました。付箋と紙で明確に管理し実行する事で、栗原さん自身も頭がスッキリした状態で仕事に取り組むことができると喜んでいただけました。

Rebooterに欠かせない姿勢

「相手と同じ目線で物事を考える」

サービスやツール導入を提案するに当たり、気をつける点はクライアントの立場になって物事を考えること。
また、「悩みを一緒に解消していく」という心構えが必要。

コンサルティングと聞くと、身構えてしまう方も少なくありません。難しいシステムや最新のツールの導入に拘らず、相手に寄り添った実現できる提案が求められます。

以上が栗原精機の現場レポートとなります。

今回の大きな改善点は2点。
①クラウドソーシングを使用しバックオフィス業務を軽減。
②スケジュール管理で業務を明確化。

両案とも至ってシンプルな内容になりますが、課題業務を円滑に改善する提案が行えました。

Rebooterとして訪問した際には、相手と同じ立場に立つことが重要です。そこから会社の全容、組織の状態を対話の中から探ることが可能となり、業務で円滑に稼働していない部分を明らかにすることができます。
そして、相手と同じ目線に立つことで実行可能な提案を行うことができます。課題が発覚した際には、手が付けられる部分と、すぐには対応できない部分を見分けることも重要です。絡まり合った問題を大きな力で解決するのではなく、1つずつ解いていくことが小規模企業の業務改善に求められているものです。